1年前に体重計を買った。
絶対に痩せるぞ、と決意してジョギングを始めたりしてその時に買った
で、無事にダイエットに成功した。
その成功を数字で見せてくれたのは体重計だった。
ある程度痩せたから、あまり体重計に乗らなくなった。
確かに電池マークが出ていたのは気づいていた。
でも、あんまり使わないしな、と体重計からの小さなSOSを放っておいてしまっていた。
体重計にはメモリー機能があった。
過去の体重や数値を記憶しておいてくれる機能。
私が忘れてしまっても、体重計は過去の思い出を覚えていてくれた。
今日体重計に乗った。
一瞬数字が見えてから、画面が消えた。
電池切れだ。
適当に見つけた電池に入れ替えた。
メモリーが消えた。
体重計は事務的に日付と時間を聞いてくる。
私の過去のメモリーは消えていた。
体重計、君のメモリーは、記憶は、思い出は、電池とともに消えた。
体重計、君はいるけど、私とのあのダイエットの日々の思い出はもう覚えていないんだね。
テーブルの上に4本の電池、捨てられない。
これが君の魂だったのか。
いま君の抜け殻だけがいるよ、でも、また新しい思い出を、作るよ。
さようなら1人目の体重計。
でもまだちょっと悲しいから、
ごろごろして邪魔だけど、君のバッテリー切れの魂ともう少し一緒にいるね。